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THE TEAM 5つの法則 / 麻野耕司

「偉大なチームには偉大なリーダーがいる」のではなく、「偉大なチームには、法則がある」
(p.253)

ポイント

4種類のチームパターン

・環境の変化度合い:相手チームの作戦や行動がどれだけ自分たちに影響するか。環境変化の大きさ、激しさを表す。
・人材の連携度合い:同じチームの選手同士の連携がどれだけ必要か。同じ時間に一緒にプレーするか。
・サッカー型(環境大×人材大)柔道団体戦型(環境大×人材小)野球型(環境小×団体大)駅伝型(環境大×人材小)

Aimの法則(目標設定)

・同じ目標を持つグループをチームという
・意義目標・成果目標・行動目標がある
・意義目標はブレークスルーを生む効果、行動目標はメンバーが取るべき行動を明確化できるメリットを持つ

Boardingの法則(人員選定)

・日本企業は長年、新卒一括採用・終身雇用・年功序列だった。非常に画一的な環境のため、新卒男性正社員で占められている場合が多い。
・その環境もあり、ダイバーシティが叫ばれているが、チームによって必ずしも絶対の解で正しいものはない。

Communicationの法則(意思疎通)

・チームのコミュニケーションは小さい方がいい?
・What(設定粒度:何までルールで決めるのか)、Who(権限規定:誰が決めるのか)、Where(責任範囲:人材の連携度合いが大きければ成果で、関連度が小さければプロセス評価が向いている)
・How(評価対象:何を評価するのか)
・相手の特徴を知って、コミュニケーションを円滑に
・心理的安全を確保できる空間づくり(無知:率直質問、無能:失敗共有、邪魔:発言促進、批判的:反対意見)

Discussionの法則(意思決定)

・合議の方法(選択肢を選ぶための判断基準を出す→選択基準に優先順位付け→選択基準を満たす選択肢を複数出す→優先順位の高い選択基準に合致する選択肢を選ぶ)
・独裁者が持つべき影響力の源泉:専門性・返報性(メンバーへの支援やポジティブな関与)・魅了性・厳格性(規律や威厳)・一貫性
・そもそも51%のメリットと49%のデメリットを持つ意思決定ということを理解する

Engagementの法則(共感創造)

・エンゲージメントを高める4P(Philosophy:理念・方針、Profession:活動・成長、People:人材・風土、Privilege:特権・待遇)
・どのPでエンゲージメントを高めてメンバーを高めるかを戦略的に決定する
・報酬目的の魅力(Will・やりたい)×達成可能性(Can・やれる)×危機感(Must・やるべき)

チームの落とし穴

・社会的手抜き:自分ひとりくらいという当事者意識の低下(人数・責任・参画感)
・社会的権威:あの人が言っているからという思考停止(心理的安全の確保された議論)
・同調バイアス:みんなが言っているから(雰囲気のマネジメント)
・参照点バイアス:あの人よりやっているから(チームの基準のマネジメント)

成功したチーム、失敗したチーム

日本で幼少期から生きてきたら数々のチーム経験を積むことになると思いますが、私はその中でも特に印象に残っているチームとして、高校の部活と大学時代の学生団体の活動があります。

高校時代、バレーボール部はいわゆる弱小部でした。それなのに練習は週7であったため、嫌になった同期がやめていったり、残った同期も愚痴が多かったりとなかなかモチベーションが上がらなかった経験があります。私自身人が少なすぎて部長になったものの、初心者でバレーボールの知識もなく、あったのは責任感と所属しているという曖昧な愛着だけでした。

今思えば、部活動がエンゲージメントを高める4Pのどれもを持っていなかったのではないかと思います。私達は最悪なチームではなかったものの、きっともっといい道はあっただろうと思うチームでした。そして、今振り返るとあの厳しい練習を乗り越えるための「なにか」がなかったのかもしれません。

学生団体の活動にしても、メンバーのモチベーション管理は難しい課題でした。求めるコミット量が非常に多く、大学生らしいゆるさが少なかった分、理念に共感しないメンバーは辞めていきました。そこで成長型ではなく理念を押し出す形の採用方法に変えたところ、コミットの多いメンバーを確保することに成功していたチーム作りを実際に経験しました。一方で、組織内のメンバーの特性の多様さは殆どなくなっていたため、どのように組織の健全なバランスを保つのかを考える必要はありました。

ビジネスを行うチームの根本的な違い

今まで私が関わってきたチームの多くはお金の絡まないチームでした。しかし、働く中でのチームは利益や給料が関わるというのが大きな違いであると感じます。チームとしての目標や意思決定がリアルなものになるからです。

本書の目的として、リーダーだけでなく誰もがチームという意識を持って向上させられるような本にするというものがあります。リーダーが持つべき意識はもちろんあるとは思いますが、それだけでなく自分がチームの一員として持つべき当事者意識についても考えさせられるものがあります。

いいチームを作るというのは、単に目標達成のためでなく、純粋に自分の働きやすい環境を自分自身が責任を持って作り出していくことだと思います。行動が伴わなければ意味はないですが、人に関わっていくある意味神経を使う部分であるからこそ、本書は力強い味方になってくれる本であると感じます。

約3行感想

違う意見の方もいるかも知れませんが、私は生きる上でチームは切り離せないものだと思っています。偉大なリーダーではなく法則がチーム作りには必須であるのなら、誰にでも実践できるではないかと希望の持てる本でした。