どうしようもないほど愛おしい言葉たち
さびしさ、いとしさ、くるしさ、うそみたいにあまいせりふ、そしてうそ。
生きていたら、恋をしたら、どうしようもなく何かにすがりたくなる気持ちを、そんな夜を、みんな一人で過ごすことになるのかもしれません。そんな時に、なんでもいいからページを開いて、そこにある寂しさを自分と重ねてみたくなる、そんな本がここにありました。
ああ、このひとりであると感じる夜は自分だけのものじゃないんだ。強がったって傷ついてみたって、またそんな風に愛されたいと繰り返す愛おしい愚かさも、だって人間だから、しかたのないことだから。またこんなことしちゃって馬鹿だなあって思ってみても、友達がいなくっても寂しくてもいいんだよって突き放しながら教えてくれるのです。
世の中がちょっと複雑だって知っちゃったくらいで大人になったなんて言わないで
ひとりを強く感じるから、決して優しい本とはいえないと思います。でも、どうしようもないことほど愛おしいと思える本こそ、どんな幸せの指南書より今必要だと思うのです。
キラキラした写真や言葉に気づかぬうちに押しつぶされそうになっている私たちには、自信満々な「ポジティブに生きよう」という言葉は眩しすぎると思います。たったひとりになりたいと思うことが許されていないなんて、昔好きだった人のことを思い出してはいけないなんて、くるしいことを一人の時くらい苦しいといえないなんて、そんなのってどんな幸せなんでしょう。
もっと、簡単な言葉じゃないもので定義されたい。ロマンチックな物語にされたい。少し恥ずかしくなるような言葉を吐いてみたい。年取っちゃったなあなんて思って諦めたことすら、それはなにか苦かったり甘かったり青春なんて呼ばれちゃう味がして、そう思ってる人の中にほど甘えたい思いが残っていたりはしないでしょうか。
読んだ後の少しの厭世観、それと少しの期待感。
星が曇ってほんの少ししか見えない夜に、会えない恋人の声がどうしようもなくききたくなる、でも受話器だけを握って思い出すだけで幸せな、いやさみしさを幸せと思いたい、思いたいからこの本を何度でも読み返すのかもしれません。
約3行感想
淋しささえ愛おしく思わせてくれる言葉が好きです。
だから絶望しても美しい、切られてもなお温かい、そういう言葉にたまには埋もれてしまいたいと思ったりします。ウイスキーで酔っ払いたいんじゃない。あの金色の液体が氷の周りだけ蜃気楼のように揺らぐ、あの美しさのような言葉を探していたら、永遠に子供のような大人でいられるかなあなんて、そんな甘ったれた考えさえも溶かして許してくれるかなって。