LIFESTYLE

【愛着障害】不安型(Nタイプ)の行動と背景について考える

愛着スタイルについて、前回の記事で詳しく説明しました。安定型(Sタイプ)、回避型(Vタイプ)、不安型(Nタイプ)の主に3つの愛着スタイルがあります。今回は、私が本を読んでいてより興味をもった不安型について深堀りしていきたいと思います。

「愛着スタイル」や「愛着障害」という言葉を初めて聞く方は、こちらの記事を先に読んでみてください。

不安型の愛着スタイルのおさらい

相手と親密になりたいと思う気持ちが非常に強い一方、相手との関係で大きな不安を抱くのが不安型の人たちの特徴でした。愛されたいという強い欲求と、拒絶されたくないという思いから相手の顔色を伺って生活しがちなのもこのタイプです。感情の変化に敏感ですが、性急なあまり判断を間違えることもあります。

接近ストラテジー

このタイプは、相手との関係性において不安な気持ちになると、相手と物理的にも心理的にも近づこうとして行動を起こします。不安型の人がとるこのような思考を「接近ストラテジー」と呼びます。

例えば相手の良いところばかりが見えたり、他のことが何も手につかなくなったり、相手から連絡が来るまで不安で仕方なくなったり、相手の気を引くためにわざと駆け引きを仕掛けたりするのです。

ぺま

不安型の人にとって、相手が人生のすべてかのように振り回されてしまうのね

Bさんの場合

愛着障害を抱えた人が身近にいた場合、それを愛着障害だと知らないと周囲の人は混乱する場合があります。その人の行動が大げさに思えたり、話が噛み合わないように感じてしまったりするからです。どのように関わっていけばいいのでしょうか。ここではBさんの実際の例を見ながら考えてみましょう。

ぺま

どうやってお互いを尊重して関わっていけば良いのか考えていきたいな

愛着障害の行動・思考パターン

愛情への不安感

常に相手がいなくなってしまうのではないか、自分は嫌われてしまうのではないかと考えているのは不安型の大きな特徴です。

Bさんは常に恋人や友達やセフレが自分のもとを離れてしまうのではないかという不安を抱えていました。相手の地雷を踏まないように精神をすり減らし、誰からも嫌われたくないという思いが強いようでした。初対面ではあまり自分から話すことはできず、会話の中ですら実際に今までに傷ついた経験も多くあるといいます。特に否定されることには敏感で、明らかに問題のある関係でも終わらせることができないそうです。

急速に距離を縮める

不安型の人は相手との距離を急に縮める傾向があります。距離感が近く、また恋愛感情だと判断する速度も早いため、恋愛関係や肉体関係になりやすいと言われています。

Bさんはそもそも、初対面ですら人との距離が近くプライベートゾーンも狭い人です。一方で相手の嫌がるサインには非常に敏感でもあります。肉体関係にはまることも多く、非常に経験人数が多いそうです。

ネガティブな反応

愛着障害を抱える人は、傷つきやすく、またその時に極端にネガティブな行動に走りやすいという特徴があります。

Bさんも非常に傷つきやすい人でした。相手に傷つけられたと思うと、それに徹底的に仕返しをしないと気がすまないと言いました。また、その一方で傷ついた事実にひどくふさぎ込み、自分を支えてくれるものを探す行動に出ました。大抵それは異性関係だったのですが、一気に距離を縮めて依存してしまうあまり、軽い気持ちだった相手と合わずにまたすぐにその対象を失うという悪循環を繰り返していました。

ぺま

このあたりまでの事実で、Bさんがかなり強く不安型の性質を示していることは明らかだね。

心身症

愛着は精神的な発達だけでなく生理的な発達にも大きく寄与しているといいます。つまり、愛着障害の人は身体的・精神的にも脆い性質が見られるというのです。

Bさんは子供の頃から身体を壊しがちで、学校も休みがちだったといいます。現在でもよく風邪を引き、冬は毎月のように寝込んでしまうこともあると言いました。また、恋人との関係や人間関係に悩むとすぐに不眠症を発症するそうで、長いこと眠れない日々が続いたこともあるそうです。

共感性が低い

相手の気持ちに対する想像力や共感力が低いことも、愛着障害の一つの症例としてあげられます。

Bさんは、相手を論破する癖があると言いました。相手にも気持ちがあることは分かっていても、理論攻めにしてしまう傾向が治らないのだそうです。Bさんは人の話を聞くのは得意な方ではなく、かなり話し好きな人なのも共感性と関係があるかもしれません。

過度なこだわり

愛着障害の人は、自分自身で自分を守ってきた経験から、自分の意見や考えを簡単には曲げることができないようです。例え折れたほうが良いと分かっていても、意地をはってしまうといいます。これと同様に反抗的な態度なども、普段は隠れていてもストレスのかかった状態になると出ることがあります。

Bさんはまさしく自分の意見に執着する人でした。自分が間違っておれることもしたくないから、理論で完全に武装してから戦うのだそうです。意図的に相手を攻撃していると感じられることもありました。また、恋人との別れ際にも、一切折れることなく相手の非を批難し続けたのだといいます。

性行為への依存

安全基地をもたない不安定型の人は、時になにかに依存することで一時的な安心を得ようとします。また、愛着障害では愛情や性愛への混乱を幼いときから起こしやすいという特徴もあります。同性愛のきっかけとなったり、幼女趣味やマゾヒズムなどの趣味を誘発したりするといいます。

Bさんの場合は、依存の対象は異性でした。Bさんは同年代の一般人と比べると経験人数が遥かに多く、その多さはおそらく桁違いでした。外見では遊び人には見えない一方で、常に誰か会える人がいないと満たされないのだといいます。恋人と安定した関係を保てていない場合や恋人がいないときは、常に複数人と関係を持つのだそうです。

ネガティブな評価の一般化

どんなに愛情を注がれても、傷ついた経験が評価のすべてを決め、良かった点を忘れてしまうことがあるのも特徴と言えます。例えマイナスな経験が例外的なものでも、それが良かった思い出も覆ってしまうのです。

Bさんは極端にお父さんについて悪い評価をしているようでした。お父さんについていい話を聞くことは一度もありませんでした。また、元恋人についても、幸せになってほしいというものの、矛盾した行動をとっているようでした。別れ際の話を色んな人話したり、恋人の主張の間違いを指摘せずにはいられないようでした。また、相手が嫌がると知りながら、相手に頼まれているにも関わらずSNSの写真を消さずにいると言いました。

ぺま

Bさんには相当強く愛着障害の症例が当てはまっているね。。原因はなんだったのだろう。

不安型の原因

主原因:家庭環境

不安型のタイプは、子供の愛着パターンで言うと抵抗型・両価型に相当します(詳細は前回の記事を参照)。これは親が子供にかまうときと無関心なときの差が激しかったり、過干渉な場合に現れやすい特性でした。

Bさんは実のご両親がいましたが、共働きで兄弟もおらず、幼い頃から誰かと一緒に御飯を食べるということがほとんどなかったようでした。家に自分以外の人がいることがそもそも少なかったようです。自分でも、両親からの愛情に憧れはするが、自分には理解できないものでもあると言っていました。一方でご両親からの期待は大きかったようです。中学時代にはそんな親への反抗のために一切勉強をしなくなったと言っていました。

現在でも、特にお父さんとの関係が良くないようです。バカにするようなことを言ったり、実際に軽蔑しているようでもありました。一方で自分の生活については親に依存しているようで、親の元を離れることを強く望みながら依存するという相反する関係を続けているようでした。

助長した原因:恋愛経験

安全基地を持たずに育った人が愛着障害を克服するためには、安全基地となってくれる存在が不可欠です。しかし、その存在が突然消えることは、愛着障害をより深刻にする可能性があります。

Bさんは初めての恋人とは数年の付き合いを続けたそうです。しかし、その関係の終わりは、自分が弱って助けを必要としている時に相手から切り出されたのだといいます。Bさんは強いショックとともに裏切られたという気持ちになり、不安を鎮めるために不特定多数の異性と身体の関係を持つようになったと言いました。

また、その次の恋愛についても恋人に振り回されることになったといいます。自分がしていないことで責められるなど、1年以上の付き合いの上でもなお相手から信用されていなかったことに深く傷ついたそうです。

ぺま

家庭環境で生まれたこじれを、恋愛関係が強化してしまったように見えるね。恋人との関係がもっと安定したものだったら、今は不安型の状態は薄れていたのかもしれないね。

不安型を克服するために

愛着障害の克服には、安全基地の役割を担ってくれる存在が不可欠となります。それは家族や恋人、医師など、長期的に安定して一緒にいることができる存在でなくてはなりません

Bさんは、次に恋人を作る場合は「絶対に別れることがない人がいい」のだと何度も言っていました。それはBさんの克服のために正しい考え方とも思えます。しかし、悪い関係でも別れられないのも不安型の特徴と言えるのです。もし相手が自分を不安にさせるような人であるなら、早期に関係を断つという判断ができるようになる必要がありました。

また、愛着障害の克服には社会的な役割を持つことも非常に効果的だといいます。Bさんは人との関係の中で労働してお金を稼ぐという経験がなく、異性以外に自分を求めてくれる場所を作ることが必要なように思われました。また、それにより自信も持てるようになる可能性が高いです。

安定型の人を安全基地とし、Bさんが不安な状態を抜け出せる日が来ることを切に願っています。

ぺま

今回は踏み入ったことまでお話を聞かせていただき、本当にありがとうございました。

関連文献

愛着障害 子供時代を引きずる人々』岡田尊司(光文社新書)

今回書いた愛着障害について、要因から特性、克服までを研究内容と実例の両方から丁寧に説明されています。夏目漱石や川端康成、ヘミングウェイなどの歴史的文豪達やオバマ大統領・スティーブ・ジョブズに至るまで、彼らが抱えた問題を愛着の視点から紐解いていきます。克服についての実践やその困難さと成功例についても迫っています。

異性の心を上手に透視する方法』アミール・レイバン/レイチェル・ヘラー(プレジデント社)

大人の愛着スタイルの観点から恋愛関係を解き明かしている本です。なぜうまく行かない恋愛にハマってしまうのか、毎回同じようなあわない相手ばかり選んでしまうのかには愛着に関わる理由がありました。安定型・不安型・回避型のそれぞれが良好な関係を築くため、意識すべきコミュニケーションの方法についても書かれています。