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【2020年】大人が読みたい愛と性|厳選おすすめ小説7冊

恋愛を描く作品に触れる中で、そこに性が切り離せないものになった時、その深さを知れるほどに大人になりたいと思ったものです。今回は性を生々しくも美しい描写で描いた作品を、恋愛小説集とはあえて分けてご紹介していきます。ちょっとどきどきしてしまいますが、早速みていきましょう!

目次

『ウエハースの椅子』江國香織
『オネスティ』石田衣良
『花宵道中』宮木あや子
『ふがいない僕は空を見た』窪美澄
『水を抱く』石田衣良
『私の男』桜庭一樹
『眠りの部屋』LiLy

『ウエハースの椅子』江國香織

愛情も孤独も性も、優しく透明な文章で描く作家

  • 大人の女性度 ★★★★
  • 静かな孤独感 ★★★★
  • 表現濃度 ★☆☆☆
  • 全208ページ

「ほんとうに?」
私は訊いた。本当にあなたも閉じ込められているの?

38歳の画家である私には、幸福な家庭をもつ恋人がいる。恋人といる時、私は欠けているものなど何もないように満ち足りて、一人の時間には絶望と対話する。やがて自分は彼の心に閉じ込められた存在だと感じるようになり、、。

不倫の恋の孤独を描いた作品。江國さんの言葉は、大人の関係を綴っても、決して生臭さがなくどこか澄んでいるのが特に好きです。あたたかな温度と色使いから、年甲斐もなく甘い飴をなめているような気分にさせられます。恋の孤独に沁みる言葉が見つかる1冊です。

気になる方は▷ウエハースの椅子 (ハルキ文庫)

『オネスティ』石田衣良

決して触れ合うことのない純愛が魅せる官能

  • 純愛度 ★★★★
  • 異色の愛度 ★★★★
  • 表現濃度 ★★★☆
  • 全314ページ

どんな秘密も作らない。幼い日にカイとミノリが交わした約束は、別の人を好きになっても結婚しても、心は一番そばにあり、お互いを好きでい続けるというものだった。成長しても2人はその約束を守り続け、お互いを一番良く知る関係として大人になっていくが、、、。

お互いの性体験までを熟知し、最も大切な存在だと位置づけながらも、触れ合うことはない2人。約束を誠実に守り続けながら大人になることは、信仰にも近い愛情だと思う。だが2人の関係は、それぞれに愛情を向けてくれる他者を傷つけてしまう。欲望と愛情について、新しい課題を提起してくれる作品です。

気になる方は▷オネスティ (集英社文庫)

『花宵道中』宮木あや子

江戸末期、美しい遊女達の官能と宿命

  • 残酷な運命度 ★★★★
  • 美しい色彩度 ★★★★
  • 表現濃度 ★★★★
  • 全365ページ

人を愛することなど忘れ去ったはずだった朝霧が愛した男。幼い日に捨てられた父に抱かれる霧里。それぞれの遊女が残酷な宿命に絡め取られていく中で、別の男に抱かれながらも必死に愛おしい人を想っている。愛憎と欲情が苦しいほど渦巻く新吉原を描いた1冊。

遊女の命の儚さと苦しみを、美しい官能の色使いでぶつけられる衝撃作。報われない恋心と、続くともわからない一瞬のやさしい時間の流れは、より切ない気持ちへと導きます。恋など叶わぬものだった場所で、女性たちは何を思い生きていたのか。時代を超えて悲恋を味わう作品です。

気になる方は▷花宵道中 (新潮文庫)

『ふがいない僕は空を見た』窪美澄

生きることそれ自体、生々しいことなんじゃないか

  • 泥臭く生きる度 ★★★★
  • 若いエネルギー度 ★★★★
  • 表現濃度 ★★★★
  • 全306ページ

高校1年生の斎藤くんが通うのは、コスプレオタクの年上の主婦の家。週に何度も関係を持つうちに、性欲以外の別の感情が芽生え始めるものの、彼女との関係が彼の高校生活に影を落としていき、、。

生きること、産まれること、交わること。どこまでが美しく、どこからが汚らわしい行為なんだろう。なぜ他者を傷つけずには生きられない人はいるのだろう。生きていること、家族という逃れられないしがらみ、その苦しさも喜びも描いた1冊です。

気になる方は▷ふがいない僕は空を見た (新潮文庫)

『水を抱く』石田衣良

過激で赤裸々すぎる欲情と快感

  • 愛情度 ★★★☆
  • 過激な刺激度 ★★★★
  • 表現濃度 ★★★★★
  • 全455ページ

営業マンの俊也は、ネットで知り合った年上の謎めいた女性「ナギ」と会う。初対面で別れ際に頬を舐められてから、非常階段やクラブ、デパートのトイレ等、あらゆる場所で過激な行動を共にするようになる。だが彼女は毎日男を渡り歩いても、決して俊也とは寝ようとしないのだった。そんな彼にナギと別れろという脅迫めいた手紙が届き、、、。

ここまでするのは、ちょっと刺激が強すぎるんじゃないかと焦るほどみだらな本書。なぜ体を重ねようとしないのか、そこには愛情があるに違いないのですが、彼らの重ねる行為の大胆さにどうしても目を奪われてしまうのです。なぜだか読者が焦りを覚える、そんな冷静ではいられない1冊です。

気になる方は▷水を抱く (新潮文庫)

『私の男』桜庭一樹

親子、記憶、罪。濃すぎる禁断の血の匂いがする

  • 暗い愛情度 ★★★★
  • ぞっとする気配度 ★★★★
  • 表現濃度 ★★☆☆

腐野花は10歳で孤児になり、親戚の淳悟に引き取られた。凶悪なヒモと噂されるような落ちぶれ疲れた孤独をまとった彼は、花とは記憶と罪と肉体を絡めあわせてきた。花の結婚から、物語は彼らの過去を少しずつ遡っていく。

どろっとした空気や湿った匂い、過去と暗い男との繋がりから逃れられない花。だが、逃れられないことこそが究極の悦びであり、2人の関係の濃度を一層高めている。なぜ、この男女は純粋な親子以上の血の濃さを感じさせるのか。粘りつく愛情に中毒性すら感じる1冊です。

気になる方は▷私の男 (文春文庫)

『眠りの部屋』LiLy

美男子のセラピスト。香り立つ女の本能

  • 深層心理度 ★★★★
  • 愛情の歪み度 ★★★☆
  • 表現濃度 ★★☆☆
  • 全320ページ

美しく艶のあるセラピストの童夢は、ハーブティーとアロマ、声と夢によってスリープセラピーを施すサロンを持っている。そこには苦しい生活の中で、ただ心と体を休めることを渇望する女性たちが集まってくる。童夢は彼女らの夢に入って、彼女らを更に深い眠りへと導いていく。

美しい青年が夢に入ってセラピーを行う。その響きの妖艶さがこの本には終始漂っているように思います。愛情も憎悪も、家族も孤独も、不思議と癒やされる空間。あたたかな居場所をつくりたいだけなのに、そこに差し込まれる執念と嫉妬。非日常と現実感が交錯するお話です。

気になる方は▷眠りの部屋 (角川文庫)

以上定番から隠れた名作まで、選りすぐりの7冊でした。
ぜひこの機会にいつもより濃いめの1冊を堪能してみてはいかがでしょうか。
別のテーマの小説集もぜひ見てみてください😊